1951年3月京都生まれ京都育ち、画筆製造業・面相筆職人の親から 面相筆製造を受け継ぎ三代目・中津大造です。
1974年20代よりこの道に入り、杉本画材(2008年廃業)や知る人には名人とも言われた父 中津巌(東山区轆轤町にて生まれ 1994年6月没)の元にて職人としての研鑽を積んできました。 父没後1994年よりは、工房を左京区大原の住まいに移し 2012年より自宅工房兼店舗として販売もしております。
ごく細い線が描ける筆 腰があり、含みの良い最良の筆として 戦前より、各問屋・店を通して 京焼など陶器の絵付け、日本画、 友禅 図案(デザイン)、日本人形の顔、能面、紋書き、仏画 細密画、水墨画、水彩画、洋画と、京都を中心に、広く使っていただいてきました。
中津筆工房の名前を 筆軸に付けての直接の販売を、2008年9月より始めた次第ですので 筆の名前としましては日が浅いのではありますが 近年では主に杉本画材の京都上野晃暢堂製 あるいは稲本文華堂の筆として、販売されてきました面相筆です。
近頃では、絵手紙や写経、書筆の細筆・小筆にも適していると 好まれて使っていただいています。
面相筆 とは 筆先が鋭く、細い線が描きやすいので 能面や日本人形の目鼻などを描くのに用いられたところに名前の由来がある筆で 軸が二段三段になっているつくりの細筆のことです。
中津筆工房では 盆混ぜ(ぼんまぜ)、振駒(ふりごま)、引き落とし、という昔からの 伝統の技法のままで、現在も製筆しています。 毛元が小軸の中に13 〜19mm入っている、しっかりした造りですので 腰があって筆先の返りがよく、また毛が抜けにくく めったに割れが生じることのない筆です。
一本一本手作りですので、全く同じとはいかないものでもありますが 製造の全工程を、分業体制をとらずに中津大造本人が 責任をもってやっております。
先代、先々代より構築してきた伝統の製法・技術は、特有のものでもあり 経験からの感覚で体得するものであるだけに、途絶えさせたら再興できないものです。 後継できるような職種、形にするために、日々努力しています。
筆先のきく、より良い面相筆を求めてくださる方々に どこまでもお答えしていきたいと思っております。 どうぞ末永く 宜しくお願いします。
-付記-「中津筆工房の筆の経緯」
気に入って使っていた面相筆がなくなってしまったと 探し求められていた筆が、実は当方の筆であるということがあります。 製造職人と問屋とのしくみより 今ある同じ筆が、他の名前・ラベルで広く出ていました経緯がありますだけに わかっている範囲で詳細を記しておきます。
先代の 中津巌(1994年6月没)は、 面相筆製造職人として、ラベル無しで京都の2軒の店舗兼問屋に卸していました。 そしてそのそれぞれの店の名前・ラベルで、各方面に販売されていました。 1994年 父没後よりは、ただ一人の弟子である私 中津大造が 面相筆製造をそのまま受け継いできました。
主たる卸し先の杉本画材 (西大路通、大将軍)は、 京都 上野 晃暢堂 の名で筆の販売をされていました。日本画、及び西陣、友禅、 染め織り関係が主でした。とりわけ黒軸の長鋒鼬面相は人気が高く、よく出ていました。 店には、数人の職人の筆がありましたが、同じ筆がある場合 当方製造の筆は、「特製」と、付けられていました。
杉本画材は、2008年8月廃業されましたので、 その折に、中津筆工房名のラベルに替えさしていただきまして、 杉本画材が卸されていた各方面の店、京都をはじめ、名古屋、和歌山などへの 直接卸し,をはじめた次第です。
そのひとつの京都のエビスヤ画材(七条東山)とは 2012年初春に取引を終了しました。
また、残念ながら京都の七彩画房(四条通 祇園町)は 2013年3月19日閉店されました。 そしてもう一軒、名古屋市の美阜屋(ミフヤ、中区栄)も 2013年3月31日をもって閉店されました。 岐阜市の丸百商会にも卸していましたが 2017年をもちまして画材部を閉店されました。 和歌山市のヴィーナス画材は2019年3月31日に閉店されました。 京都の吉岡勤染料店も2019年8月末に廃業されました。
もう一軒の卸し先の稲本文華堂 (京都五条間之町)は 清水焼、京焼をはじめ有田焼、九谷焼、薩摩焼など、陶器の世界では最も知れ渡っている老舗でした。 各地陶工組合や京都府立陶工高等技術専門校にも納品されてきましたが 2015年春に廃業されました。(五代稲本吉雄様は、その6月7日逝去されました) その折より、稲本文華堂が卸されていた各方面、京都をはじめ、 九谷焼(石川県能美市 九谷上絵協同組合、千圃堂) 有田焼、白薩摩などへの直接卸し及び販売をはじめた次第です。
稲本さんが製筆されてきました巻軸・茶軸・白毛一号 二号等は、中津が引き継ぎ作っています。 稲本文華堂の他の仕入れの筆も引き継ぐことになりましたので 中津筆工房製筆以外のダミ筆や平筆、彩色筆などの販売も始めました。 (一部在庫限りとなる筆があります)
初代 中津石松(1871−1945年8月)の頃より すでに稲本文華堂とは、取引があったとのことです。 2012年春より中津筆工房のラベルにしていただきましたが 以下が、稲本文華堂に卸してきました中津製造の筆です。
・金泥書(稲本文華堂では金筆とよばれてきました) ・長鋒面相 ・貂毛書 ・鼬面相 大、中、小 ・吟面相 大、中、小(稲本文華堂では清玩ラベル) ・鼬毫点附(稲本文華堂では皆限ラベル) ・白毛三号 2015年春よりは、当工房筆カタログでの筆名に統一させていただきました。
中津筆工房のラベルに替えるにあたって 筆名も、漢字もわかりやすいようにと、いくつか変えてしまっていました。 それでは、同じ筆とは感じられないという御意見も頂戴いたしまして 筆名を元に戻しました。 筆名の漢字等の変更を下記に列挙しておきます。
ただ、特製巴面相、黄軸特製面相に付いていました「特製」は 他の筆もすべて当工房の製筆でありますだけに 今後も、「特製」は付けないことにしています。
長峰鼬面相=長鋒鼬面相、長峰面相=長鋒面相、テン毛書=貂毛書、 点附=鼬毫点附(ゆうごうてんぷ)、地紋書=鼬毫地紋書(ゆうごうじもんがき) 鼬金泥書=鼬毫金泥書(ゆうごうきんでぃがき)
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